『Fire Dance』では、ボーカルのオーバーダブの活用が主な要素となっている。曲によっては最高16トラックにわたり、昔ながらのスタイルでバスからソプラノまでをベアタが歌っている。 最新技術で端折ったり、からくりを仕掛けたりせず、昔ながらのやり方で、卓越したボーカルの技巧だけで録音したもの。16トラック録音を披瀝するのでなく、ベアタの美意識にしたがって、音楽に織り込まれている。
ベアタはクリエイティブなジャズボーカル表現技法の最前線に居る存在だが、本作では顕著なワールド・ミュージックの影響と R&B の要素が見られる。 リズムのグルーブは、ジャンルを超えて中東や北アフリカ、東欧の即興的民族音楽様式を起想させる。それは専ら、極めて独創的な歌詞の無いボーカル・スタイルに由来する。ベアタのスタイルは完全無欠のイントネーションと管楽器にも匹敵する流麗なリズム感を誇り、ある時はシェナイやオーボエのようであり、ある時はアルト・フルートのように甘美であり、またある時はミュート・トランペットのように温かく、首を上下させたり、とぐろを巻いたり、ゆらめいたりするへびのようだ。ベアタにとって、『Fire Dance』は生涯にわたり独自の深淵な表現法を追求する道を、さらに一歩前進するものだ。
メディア評 of Fire Dance
★★★★ ダウンビート誌4つ星★★★★
「実に興味深く斬新な作品。ベアタ・パテルはFire Dance収録の全11曲を歌詞の無いメロディーで歌い切っている。大胆かつ果敢な決断だが、それに見合った成果が実現されている。」「ベアタ・パテルはFire Dance収録の全11曲を歌詞の無いメロディーで歌い切っている。
大胆かつ果敢な決断だが、それに見合った成果が実現されている。ポーランド出身・現在カリフォルニア州在住のパテルは、各曲で最高16声部に及ぶオーバーダブ (多重録音) を行い、独りで女性コーラス・グループのような個性的なサウンドを生み出す。 本作において、パテルはピアニストで全11曲を作曲したアレックス・ダンソンをはじめとする有能なメンバーを起用している。パテルは、癒えない心の傷から喜びまで実に幅広い表現力のある、アラブや北アフリカ、ヨーロッパの民俗歌謡音楽を主体として楽曲の空間を満たす。本来はソプラノのパテルだが、音階を下降して難なくバス声部まで到達する能力を備えているように思われる。パテルは速いスタッカートのフレーズを頻繁に用いるが、特にスキャット時に多くのシンガーが行うように、様々な子音を放縦に用いる時など、そうしたフレーズはジャズのスキャットを彷彿とさせる。パテルのレコーディング・メンバーは、サム・ニューサム (s. sax)、アントン・シュワルツ (t. sax)、 アロン・リントン (b. sax)、スコット・コラード (key)、アロン・ジャーメイン (b)、アラン・ホール (d)、ブライアン・ライス (perc) という強固な7名構成だ。リスナーはリズミカルで楽しげな1曲目の『Curse Of The Locust』により興味深く斬新な本作へと誘われる。」
ダウンビート誌 (Bob Protzman) Downbeat
「『天才がやることは非凡だ』という言葉は軽率に用いられがちだが、自らのアルバム『Fire Dance』で歌詞を歌わないボーカリストとなったベアタ・パテルには、それがずばり当てはまる。」
「天才がやることは非凡だ」という言葉は軽率に用いられがちだが、自らのアルバム『Fire Dance』 (B&B Records) で歌詞を歌わないボーカリストとなったベアタ・パテルには、それがずばり当てはまる。実際には、アルバム全曲を作曲したアレックス・ダンソンも、それに一役買っている。パテルの5枚目のCDとなる本作では、ダンソンのオリジナル曲11曲でレコーディング・メンバー7人を彼女がプロデュースしているが、彼女のボーカル・アレンジが鍵となっている。バスからソプラノまで最大16パートを彼女ひとりでオーバーダブし、それを上物のサックス3本とキーボード、ベース、ドラムス、そしてパーカッションで支えている。それは、モロッコのグナワ音楽やウクライナのダッカブラッカ系サウンドなど、中近東、北アフリカ、東欧の民族音楽からと様々な様相を見せるエギゾチックなワールド・ビートの祭典さながらだ。パテルにはオーボエやフルートなどのサウンドで歌う能力があり、 彼女のボーカルは木管パートの全てを担当している。歌詞こそ歌っていないものの、幅広いボーカル・テクニックを独自の純朴でありつつ洗練された歌い回しで用いるパテルの極めて高度な表現力は一切劣ることが無い。
マイク・グリーンブラット; Mike Greenblatt
「ベアタ・パテルのジャズ・ボーカルにおける真の才能が光り輝いている。リスナーはボーカルを知り尽くした巨匠を目の当たりにする。」
ジャズ・ボーカル界の壁を更に打ち破る、至って痛快な作品。ベアタは現在まで2回本サイトで採り上げた (前回は第142号、それ以前は第142号に記載) が、その彼女がまたもや前作をしのぐ作品を発表した。本作タイトル曲『Fire Dance』を聴けば、ベアタが新作を発表するたびに私の胸が高鳴るのかが、何の不思議も無く分かるであろう。それは、ベアタの至高のボーカルにより、彼女の内なる歓喜が、プロとして完璧に表現されているからだ。 収録された11曲は、すべて作曲家・ピアニストのアレックス・ダンソンが、特にベアタによるボーカルの魔法を念頭に置いて作曲したオリジナル作品である。実のところ、『Harvest Season』を聴くだけで、リスナーはボーカルを知り尽くした巨匠の存在を目の当たりにするであろう。(短い曲なのでリピートボタンを多用することになったが、皆そうせざるを得ないだろう) 個人的には1曲目の『Curse of the Locust』が最も気に入っている。ベアタのジャズ・ボーカルの実力が曲全体にわたって輝く名曲で、(彼女のレコーディング・メンバーも含めて) 私がEQ (エネルギー指数) 4.99の 「イチ押し」に指定するに相応するものであると確信させてくれる。ひたすら心奪われるボーカリスト、ベアタに関する詳細は、彼女のウェブサイト内の本アルバムのページで参照できる。
ディック・メタカーフ; Dick Metcalf Improvijazzation Nation
「非常に魅力的な作品。パテルと作曲家アレックス・ダンソンは、完璧に均整が整えられ、興味深く音楽性の高い、十分練り込まれた作品を生み出した。」
「私は落胆するのを覚悟していた。本作の音楽性について『ボーカルの芸術性の新たな可能性を切り拓く』歌詞の無いボーカルという解説があったからだ。それ以外にも、本作の音楽性の紹介には極めて大袈裟な言葉が含まれていた。
そうした状況は時として悪い予兆であるが、実際に本作は非常に魅力的な作品であることが分かった。パテルと作曲家アレックス・ダンソンは、完璧に均整が整えられ、興味深く音楽性の高い、十分練り込まれた作品を生み出した。本作では、その大部分において東洋の民族音楽的要素の影響が見られるものの、ジャズと呼ぶに相応しい。おそらくワールド・ジャズと呼ぶのが妥当だろう。『Curse Of The Locusts』 (いなごの呪い)、『Daylight Saving』 (夏時間)、『Sand Dunes』 (砂丘)、『Harvest Season』 (刈り入れ時)、『Fire Dance』 (ファイアー・ダンス)、『The Princess』 (王女)、『Flashback』 (フラッシュバック)、『The Quest』 (冒険の旅)、『Reaping Spell』 (刈り入れの呪文)、『Ritual』 (儀式) といった曲名は、リスナーの興味をそそる。全体を通して、本作にはおぼろげなストーリー感がある。
ボーカルは、バンドの中で主にメロディーを担当する楽器のひとつとなっており、多重録音の威力によって、決して単なるスキャットでは無く、バンドと一体化してその構成要素となっている。本作には、北アフリカや東欧の音楽の影響を受けたリズムの推進力がある。『Curse of the Locusts』はジャングル風のドラムで始まり、ボーカルのスタッカートがそれに続く、自然な流れのジャズ作品だ。この曲では、その後、多少昆虫のような音のサックス・パートが加わり、面白いボーカルのオーバーダブで締めくくられている。『Harvest Season』のリズムは、喜びに満ちた農民の踊りのリズムだ。『The Princess』は緩やかなリズムの夢想曲で、長く続く様々な様相のソロの後に、浮遊感の高いソプラノ・サックスが続く。『Flashback』では、東方系のドローン音楽のボーカルやシェーカーがジャズ風のキーボードで包み込まれている。『Reaping Spell』では、呪文 (spell) と同様、継続的な反復フレーズが聴かれる。そして『Ritual』は各声部がビルドアップされた、パンチのあるボーカル主導型作品である。ボーカル以外のバンドのメンバーは皆、十分な実力を備えている。
本作はパテルの5枚目のアルバムだ。従前作は専らジャズ・スタンダードに手を加えた楽曲であったが、本作を聴いて、彼女の従前作品も大いに聴く価値があると推測される。」
アン・アレックス; Ann Alex Bebop Spoken Here
「本作で多重録音されたボーカルは、時としてスウィングル・シンガーズやマンハッタン・トランスファーを思わせる定番ジャズ・ボーカル・グループのサウンドであり、またオーバーダブされた歌詞の無いボーカルはボビー・マクファーリンを彷彿とさせることもある。しかし、ベアタは『Fire Dance』の大部分において、本作ならではの独創的サウンドを築き上げている。」
ベアタ・パテルの1枚目から5枚目までの作品は「典型的」ジャズ・ボーカル・アルバムと言えるであろう。なぜなら、5枚目までの作品はスタンダード曲とオリジナル曲を組み合わせた通例の構成だからである。それはベアタのボーカルに対するアプローチからインスピレーションが感じられない、ということではなく、ベアタの多様で変幻自在なスタイルは高く評価された、ということである。しかし、ベアタのファンにとって、最新作『Fire Dance』は、従前作品からは全く予想不可能である。ベアタは本作でアレックス・ダンソンを起用してオリジナル曲11曲の作曲を担当させ、それをベアタが歌詞の無いオーバーダブのボーカルとサックス3本、そして4パートのリズム・セクション用にアレンジしている。その結果、本作の一部楽曲は最高16トラックをオーバーダブしたベアタのボーカルを中心とする、ある種の現代ビッグバンドのような曲となった。本作で多重録音されたボーカルは、時としてスウィングル・シンガーズやマンハッタン・トランスファーを思わせる定番ジャズ・ボーカル・グループのサウンドであり、またオーバーダブされた歌詞の無いボーカルはボビー・マクファーリンを彷彿とさせることもある。しかし、ベアタは『Fire Dance』の大部分において、本作ならではの独創的サウンドを築き上げている。
音楽性に関しては、現代R&Bやポスト・バップ、フュージョン、そして中東・北アフリカ・東欧の音楽など、多様なスタイルの要素が本作に採り入れられている。その結果、本作は1970年代後期のウェザー・リポートや、それ以降の ジョー・ザヴィヌルのバンドに類似したアルバムとなっている。ウェザー・リポートの名作をカバーしているスウィングル・シンガーズを想像すれば、本作がどのようなアルバムか察することが出来るかも知れない。ベアタのリード・ボーカルのほか、バンドのサックス奏者もまた短いソロを取っている。また本作の2曲では3人でソロの掛け合いをしている。
本作ではベアタの歌詞無しのボーカルに対するアプローチが勝負どころとなっている。確かに本作は極めて高リスクな作品であり、歌詞無しのボーカルを基調としたアルバムがどのようなサウンドになるかを恐れる者が多いのも当然だが、ボーカルのサウンドを細心の注意を払って用い、決してうっとうしくもばつが悪くもならないようにしているおかげで、『Fire Dance』は成功を収めている。また、ベアタはいわゆる「スキャット」を多用しすぎないよう細心の注意を払っているが、そのおかげで本作は道楽とならずに済んでいる。本作で多重録音されたボーカルは、ビッグバンドの複雑なスコア譜のように、入念にアレンジされている。一押しの楽曲としては、CD中盤の端麗な抽象作品『Fire Dance』 (タイトル曲) と 『The Princess』の2曲が挙げられる。両作品では、ルネサンス以前のヨーロッパのスタイルと、伝統的な中東のサウンドを思わせる、浮遊感のあるボーカルが採り入れられている。
ジョン・サンダース; John Sanders Jazz Music Archives
「非常に現代的作品で、間違い無く堪能できる。本作の斬新で緻密な現代性は、パテル・ファンに喜ばれるはずだ。」
今まで同業者に (名指しで) 非難されたことは、1度きりだ。それはベアタ・パテルの『Red』 (B&B Records、2013年) に関するもので、そのライターは、私がベアタの作品を「ウケ狙いの音楽」程度に過小評価していると指摘した。その後、ベアタは『Fire Dance』を自らの宇宙へと放った。ベアタの専門とするボーカルは、ひとことでは言い難いが、強いて言うならば『歌詞の無いボーカル』だ。それはスキャットでは無く、ボーカリーズでも無い。それは、ベアタがボーカルをバンドのメンバーと同等の立場で扱っている、ということである。ベアタのボーカルは、ソプラノサックスのサム・ニューサム、テナーサックスのアントン・シュワルツ、そしてバリトンサックスのアーロン・リントンとうまく調和している。本作は非常に現代的で、間違い無く堪能できる。ルーマニア生まれでカリフォルニア在住のアレックス・ダンソンが手がけた本作の11曲の斬新で緻密な現代性は、パテル・ファンに喜ばれるはずだ。
C・マイケル・ベイリー; C. Michael Bailey All About Jazz「ベアタは様々な色彩で人間の声の可能性を切り拓く。」
ベアタ・パテルのファンのひとりとして、彼女の従前のアルバム『BLUE』、『RED』、『GOLDEN LADY』を紹介してきたならば、彼女の驚異的なボーカルと才能には驚かないだろうと思うかも知れないが、それは完全な思い過ごしだ。ベアタは『FIRE DANCE』で更に革新的な方向性へと飛躍を遂げている。彼女はバンド・アンサンブルへと回帰して、情熱に満ちた、心を奪う珠玉のアルバムを制作した。
ポーランド生まれで国際的なジャズ・スター、ベアタ・パテルには、独自の音楽的表現手法がある。ワルシャワ音楽院でバイオリニストとしてクラシック教育を受けたベアタには、リズムや音程、声楽や対位法に関して、数多くの一流クラシック音楽家をもしのぐ知識があるが、そうした独自の才能の全てをジャズ・ボーカリストとして駆使する。ベアタは、歌詞に集中するのでなく、むしろ自らの能力を用いて、声という非常に優れた楽器で器楽的に旋律を構築することによって、それだけで歌の真意を伝えるという試みを行っている。ベアタは個性際立つアーティストだ。彼女が自分の声だけで出すことが出来るサウンドのクリエイティビティに関する広範さは、最高水準だ。そのサウンドで、彼女は他のボーカリストが挑戦しようともしない境地に達している。その結果、本作は唯一無二の聴き応えのある作品となった。ボーカルは本作において リードの楽器となり、高みに立って 他のメンバーを挑発している。
バンドは、ベアタ・パテル (vo)、サム・ニューサム (s. sax)、アントン・シュワルツ (t. sax)、 アロン・リントン (b. sax)、スコット・コラード (key)、アロン・ジャーメイン (b)、アラン・ホール (d)、ブライアン・ライス (perc) で構成されている。
収録曲は『Curse Of The Locusts』、『Daylight Saving』、『Sand Dunes』、『Harvest Season』、『Fire Dance』、『The Princess』、『Flashback』、『The Quest』、『Reaping Spell』、そして『Ritual』だ。
ベアタは様々な色彩で人間の声の可能性を切り拓く。
グラディ・ハープ; Grady Harp Amazon
「ジャズ・ボーカルを新境地へと導き、音楽の創造性を進化させる味わい深い作品だ。」
本作では、歌詞を歌わないボーカリストにより変革がもたらされている。楽曲は全てオリジナル作品であり、ベアタはボーカルのオーバーダブを駆使して自己プロデュースしている。その結果、本作は通常のヒッピー系、アート系、ジャズ系のアーティストの作品が、より高度にプロデュースされたような作品となった。本作は主流・よくある作品の部類では無いので、そうした作品には無い魅力を十分に提供し得る。ジャズ・ボーカルを新境地へと導き、音楽の創造性を進化させる味わい深い作品だ。是非聴いてみて欲しい。
クリス・スペクター; Chris Spector Midwest Record
「多面性の強いベアタが、さらに別の側面を明らかにした作品」
本ページでも紹介したが、ベアタ・パテルは、従前作『Golden Lady』 (BB 0419) で、有名でありながら、それほどカバーされていない曲を、ピアノとベースのみの伴奏で歌っている。新作は全曲アレックス・ダンソンによるオリジナルで、歌詞の無いボーカル・ナンバーであるが、それを彼女が7人構成のバックバンドを従えて歌っている。本作の音楽はリズムが多様であり、現代のR&B、ジャズ・ファンクなどアメリカの音楽理念に潜んで、東欧、中東、北アフリカの影響が見られる。柔和で親しみやすいベアタのボーカル・サウンドは、リスナーを惹き付け、歌詞が無いにもかかわらず、温かく緊密で情熱的な雰囲気を見事に醸し出している。本作の楽曲では、ワルシャワ音楽院でバイオリニストとして、そして日本でセッション・シンガーとして磨かれた、ベアタの音楽的才能が発揮されている。彼女のバックバンドは、サックスのサム・ニューサム、アントン・シュワルツ、 アロン・リントンのほか、スコット・コラード (key)、アロン・ジャーメイン (b)、アラン・ホール (d)、ブライアン・ライス (perc) で構成されている。楽曲のサウンドに計り知れない貢献をしているのは、ベアタが多重録音により極めて効果的なコーラス・セクションを用いていることだ。歌詞が無いので、アンサンブルと一体化したメンバーとしてのベアタの役割、楽器として用いられている彼女の歌声が強調されている。多面性の強いベアタが、さらに別の側面を明らかにした作品だ。
ブルース・クラウザー; Bruce Crowther Jazz Mostly
「ベアタのコンセプトは新鮮であり、ボーカルの歌い回しは実に見事だ」
ベアタのコンセプトは、自らのボーカルの極めて広い音域を活用してアルトからソプラノまで複数の声部を歌うことであり、意を決してそれを実現するために、時として最大16トラックの多重録音を使用している。ベアタのコンセプトは新鮮であり、ボーカルの歌い回しは実に見事だ。
この作品の非凡性は、ベアタのボーカルが完全に楽器として使用されており、歌詞を歌うことも物語を語ることも一切無いことにある。 本作は、ストーリーを語ることよりも旋律に重点を置き、スキャットの技法を追求した、快適なBGMだ。 ベアタは、全11曲をアレンジするにあたり、ボーカルの多重録音技法を用い、 独創的かつ才気溢れる作曲家、アレックス・ダンソンを参加させている。 ベアタのコンセプトは、自らのボーカルの極めて広い音域を活用してアルトからソプラノまで複数の声部を歌うことであり、意を決してそれを実現するために、時として最大16トラックの多重録音を使用している。ベアタのサウンドは、ボコーダーやボーカル・ハーモナイザー・エフェクトを操るボーカリストを想起させることが往々にしてある。ライナーノーツによると、ベアタはボーカリストよりもリード担当の器楽家であると考えられる。それは、ジャズバンドはひたすらボーカリストの伴奏であるべきだという概念を覆すものである。彼女は、自分の独創的なボーカルをワールド・ミュージックのシチューに溶け込ませ、だしを効かせる肉のような存在にしている。ここで「ワールド・ミュージック」と述べたのは、本作はマンハッタン・トランスファーのようなビバップでも、いわゆる「スイング」ジャズでも無いからである。本作でダンソンが書いた曲は様々な文化や音楽スタイルに適している。本作には「生粋の」何かというものは存在せず、むしろ聞き心地の良いイージーリスニングのインスト作品集だ。本作は、ワールド・ミュージック番組やNPR局、オルタナティブ局やスムーズ・ジャズ局で耳にする可能性が極めて高いであろう。芸術面では、既定範囲外で音楽に彩りを与え、ボーカルを独創的なものにしようとするベアタの野心を、私は高く評価している。しかし、ジャズと即興演奏の愛好家として言えば、即興演奏はジャズの最も重要な側面であり、したがって本作のように構造を指定した録音方法は、特にボーカルに関して即興的というよりもクラシック的だ。また、ボーカリストが情熱的に歌う歌詞や物語が欲しいところだ。いったいどうすればボコーダー無しで本作をライブ演奏として再現できるだろうか。しかしながら、ベアタのコンセプトは新鮮であり、ボーカルの歌い回しは実に見事だ。
ディー・ディー・マクニール; Dee Dee McNeil Musical Memoirs
Musicians
Beata Pater - vocal
Sam Newsome - soprano sax
Anton Schwartz - tenor sax
Aaron Lington - baritone sax
Scott Collard - keys
Aaron Germain - bass
Alan Hall - drums
Brian Rice - percussion
Recording info
Produced by Beata Pater
All compositions by Alex Danson
Mix and Mastering Engineer - Dan Feiszli
Recording Engineer - Dan Feiszli
Recording Engineer - Mike Gibson
Recording Engineer - John Davis
Cover Photo - Jacqueline Amparo
Executive Producer - Mike Gibson
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